ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「……“極上の血”の力だ。強力な血の力のせいで、人間の魂を取り戻しつつある」
「まずいですよシュヴァルツ様!これでは館の中の連中に気付かれてしまいます!」
目の色は自分では分かりにくいが、洋服から見えている手足を見ると、血色が戻りつつあることに気づいた。
目や肌の色が違うだけで、ヴァンパイアたちとはまったく別物の“人間”になる。
それはヴァンパイアたちにとっても同じことだろう。
彼らも私が人間だとすぐに見分けられるはずだ。
ふたりの様子が慌ただしくなると同時に、この広間の外も人の声で騒がしくなってきて、入り口の扉を外から誰かが叩き始めた。
『いま声がしたな、誰かいるのか。関所は今日は閉めているはずだぞ』
『鍵も閉まってる。中で何してるんだ?』
『よし、鍵を持ってこよう』
扉の外には、数人の男たちの声。
この中に人間がいると分かったら、彼らはどうするのだろうか。
私は襲われたときの恐怖が甦ってきて、肩から背中、爪先まで凍るように冷たくなっていった。
「声を立てるな」
シュヴァルツさんはそう囁き、私を守るように腕の中に収めると、強い力で背中をぐっと引き寄せた。