ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

「……“極上の血”の力だ。強力な血の力のせいで、人間の魂を取り戻しつつある」

「まずいですよシュヴァルツ様!これでは館の中の連中に気付かれてしまいます!」

目の色は自分では分かりにくいが、洋服から見えている手足を見ると、血色が戻りつつあることに気づいた。

目や肌の色が違うだけで、ヴァンパイアたちとはまったく別物の“人間”になる。

それはヴァンパイアたちにとっても同じことだろう。

彼らも私が人間だとすぐに見分けられるはずだ。

ふたりの様子が慌ただしくなると同時に、この広間の外も人の声で騒がしくなってきて、入り口の扉を外から誰かが叩き始めた。

『いま声がしたな、誰かいるのか。関所は今日は閉めているはずだぞ』

『鍵も閉まってる。中で何してるんだ?』

『よし、鍵を持ってこよう』

扉の外には、数人の男たちの声。

この中に人間がいると分かったら、彼らはどうするのだろうか。

私は襲われたときの恐怖が甦ってきて、肩から背中、爪先まで凍るように冷たくなっていった。

「声を立てるな」

シュヴァルツさんはそう囁き、私を守るように腕の中に収めると、強い力で背中をぐっと引き寄せた。

< 48 / 209 >

この作品をシェア

pagetop