ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
街の上空にいたはずなのに、彼はそこへは降りず、羽音を立てて方向を変えた。
小さな羽を広げて近くを飛んでいたノア君もそれに従う。
「どこへ行くんですか?」
「このまま街へは降りられない。ベルベットの騎士団の目に留まれば捕まるぞ」
「ベルベットの騎士団……?」
私の疑問には、ノア君が答えた。
「政府直属の護衛騎士団のことです。怪しい素振りをすればしつこく追及されますから、その姿で鉢合わせては危険です」
よく目を凝らして街を見ると、黒い馬に乗り、赤く重い絨毯を巻き付けたような軍服の軍隊が、街の区画に沿って整列していた。
きっと彼らのことだろう。
「森へ降りるぞ」
向かっている先には森があった。
しかしオレンジ色に煌めく街とは対照的に、森は真っ暗でコウモリの鳴き声ばかりが響いている。
ここへ降りるの……?