ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋
「シュヴァルツさん……」
怖くなって彼を見た。
あんなふうに突き放されたら、私なら悲しくて、しばらく立ち直れないだろう。
あんな言葉が出てくるなんて、私を抱き寄せるときの優しい手は、嘘なんだろうか。
「ああいう輩の相手をしている暇はない。行くぞ」
「でも……」
「しつこい」
私は黙り込んだ。
シュヴァルツさんは優しいと思っていたのに。もちろん今も私のことを護ってくれているし、優しいけど……。それでも、あんな言葉を放つ彼は怖い。
すると、ノア君が口を開いた。
「アカリ様。下界に住む輩を信用してはなりません。さきほどの男、言葉巧みにシュヴァルツ様から金品を奪おうとしたのです」
「え!?そうなんですか?」
そんなこと考えてもみなかった。
ためしに先ほどの住民を振り返って確認すると、もう別の住民とケラケラと笑いながらお酒を飲んでいる。
さっきの低姿勢な態度とは大違い。傷付いている様子も全くないなんて。
その光景を見た私に、ノア君は続けた。
「分かりましたか?ヴァンパイアと人間は違うのです。我々に善意など存在しません。何かと引き換えでなければ、他人を助けることなど絶対に致しませんから」
冷たい世界。でも、ふとそれは人間だって同じだと思った。
何かを引き換えにしなければ、何も得られない。
本当は、この世界と同じだ。