ヴァンパイア・シュヴァルツの初恋

朝食を終えると、私たちはすぐに宿を出た。

宿の外の通りに出た瞬間、シュヴァルツさんに乱暴に抱き寄せられ、胸の中に収められた。

もう慣れたけれど、いつも突然すぎる。

彼は私を抱えたままノア君の腕も掴み、建物の間の狭い路地へと引っ張り込んだ。

「あの……?」

「……静かにしていろ」

体を圧縮されると、苦しくて何も喋れなくなった。

荒っぽいが、おかげで私は息すら出ないほど静かになる。

彼がそうした理由はすぐに分かり、昨晩よりも大勢のベルベット騎士団が街を練り歩いている様子が見えた。

「住宅を片っ端から調べろ!人間を見つけ出すのだ!」

騎士団の人たちはは怯える住民たちに構わず、家々の扉を蹴り壊し、中を荒らしていく。

なんて乱暴なの……とその様子を覗き見ようと首を伸ばした私を、横からシュヴァルツさんの腕が再度絡めとり、また胸の中で押し潰される。

く、苦しい……。

目の前で荒らされていく民家の中で、ドアを蹴破られず無事でいるのは、私たちが泊まっていた豪華な宿だけだった。

シュヴァルツさんはこの宿を選んだのは、こうなることを見越していたからなのかもしれない。

「掴まれ」

「は、はい」

素早く抱き上げられると、彼は迷わず狭い路地から飛び立ち、空への移動に切り替えた。

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