さようなら、ディスタンス。







それから4か月後。高校3年生の7月。



「はぁー嘘つき、光くんの嘘つき。全然連絡くれないんっすけどぉ」



わたしはあの歩道橋でうなだれていた。



「だったらお前からラインすればいーじゃん」


「してるよ、わたしから! 3日連続! これおかしくない? 何でずっとわたしのターンなの?」


「まーまー。お前ら離れててもこの4号線でつながってんだべ?」


「今思うと、だから何? って感じだけど」



どんよりとした空の下。


今日も国道4号線は、片道2車線のアスファルトが遠くまで広がり、びゅんびゅんと車が行き交っている。



東京は梅雨明けしたらしいけど、ここは東北のクソ田舎。


秋冬が来るのは早いくせに、春夏は都会より数週間遅れをとるのがデフォルト。まだ梅雨真っ盛り。


水分を多く含んだ空気は下へ落ちていきたいんだろうけど、車通りが多いこの場所では無理やり上や横へと吹き飛ばされていた。



「お前も卒業したら行けばいいじゃん。東京」


「わたし、親に国立か公立行けって言われてるんだよね。東京の国立なんて無理だよ」


「千葉とか埼玉は? 東京よりは偏差値低いべ」


「無理無理! わたし地元のでも危ういんだよ?」


「じゃあこんなとこでグチってないで、期末の勉強すれば?」


「うっ……」



でっかいトレーラーがごぉぉんと音を上げ、わたしたちの足元へと吸い込まれていく。


振動が体につたってくると同時に、土と排気ガスの匂いが舞い上がる。



夏用の薄い制服スカートがふわりと揺れた。


隣にいる男子の白シャツもほんの少し風になびいた。



わたしたちはコンビニで買ったアイスを片手に、

国道4号線のゲート(歩道橋)上でダラダラ話をしていた。


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