さようなら、ディスタンス。
悩んでいるわたしに対し、隣の男はアイス片手にスマホをいじっている。
ラインかゲームか知らないけど、曲がりなりにも隣に女子がいるんですよ。ちゃんとかまってよ。
「なーんか今日の祐希くん、冷たくないっすか?」
ローファーのつま先で、スニーカーをつんつんと小突く。
すると、彼はめんどくさそうにスマホをポケットにしまい、めんどくさそうにわたしに視線を向けてきた。
「こんな蒸し暑い日にオチのない話聞かされるのダルい」
「え~いいじゃん。うちら仲間なんだからさー」
「うーわ。一緒にされるとかウケる」
「は!?」
バカにしたような笑みと言葉にイラついたため、シャツ越しに二の腕をつねってやった。
いって、とうめき声が彼からあがり、すかさず手首をつかまれる。
「……っ!」
力強くひっぱられると同時に、祐希が顔を近づけてきた。
少しびっくりして目をつぶる。指先には力を入れたまま、およそ5秒間。
手が離され、恐る恐る目を開けた。
「あーちょっとぉー」
手にしていたチョコミントバーは角が欠けた状態になっていた。