年下御曹司は初恋の君を離さない
「あの顔だよ」
「え?」
「策士で腹黒そうな顔だろ?」

 紀彦の言う通りだ。激しく同意する私に同情めいた顔をして紀彦は口を開く。

「八年前、アイツが高校生のときも同じ顔をして言ったんだよ。姉ちゃんと将来結婚するからって」
「……」
「そんな友紀に、このあと何を言われるのか。すっげぇ心配になった訳だよ」

 確かにそうだろう。見るからに腹黒い意味深な笑みをされ、自分の姉と結婚するからと言いだしたら恐れをなすことだろう。
 それも、自分とは特に親しくしていなかったのに、突然そんなことを言われたら不安になるのは当然だ。

 神妙な気持ちを抱きながら紀彦を見つめると、彼はそのときのことを思い出したのか。
 ブハッと盛大に笑い出したのだ。

「姉ちゃんのスリーサイズ教えろとか、連絡先教えろとか。絶対に言ってくると思ったんだよな」
「……スリーサイズ」
「男子高校の連中なんて、女を見ればそんな話ばかりだからさ」

 紀彦と友紀ちゃんが通っていたのは、男子校だった。なんとなくの想像しかできないが、たぶん紀彦が言っていることは本当のことなのだろう。

 呆れかえりながら聞いていると、紀彦は前のめりになって話し出した。

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