年下御曹司は初恋の君を離さない

 冷静に考えればわかることなのに、あのときの私は彼の黒目がちな瞳に絆されてしまった。
 案の定、友紀ちゃんはなんの迷いもなく電車のホームへと行き、電車に乗り込んだのだ。
 どう考えても嵌められたと考えて間違いないだろう。

 それにしても、友紀ちゃんの『覚悟してくださいね』と『容赦しませんから』の二言は本気だということ。そして、それを確実に実行していこうとする彼には恐れ入った。

 紀彦が言っていたが『外堀埋められまくっている』というのもあながち嘘ではないだろう。

 埋められている。埋められまくっている……。

 確かに戸惑うし、困っている。だけど……本心ではどうだろうか。
 彼の一喜一憂に敏感に反応してしまい、彼の言葉に逆らえない何かを感じている。

 これは本当にマズイと思う。今まで頑なに守っていた自分という殻を壊されてしまいそうな……いや、違う。自分で壊して出てきてしまいそうな、そんな危機感さえも覚えるほどだ。

 盛大なため息をついていると、電車が大きく揺れた。急カーブにさしかかったのだろう。
 キキィーと線路と車体が擦れる音とともに、私の身体も大きく揺れてしまう。
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