年下御曹司は初恋の君を離さない

 慌てて足に力を入れたのだが、今日は先日買ったばかりのハイヒールで履き慣れていないために、うまく力を入れて踏ん張ることができない。

 グラッと身体が倒れそうになったときだった。

 友紀ちゃんが私の腰に手を回し、支えてくれた。グッと近づいた距離にドキンと胸が高鳴ってしまう。
 彼の体温、彼の吐息を肌で感じてしまい、どうしようもないほど動揺している。

 一方の友紀ちゃんは慌てた様子で、私の顔を覗き込んできた。

「大丈夫? 未来さん」
「えっと……うん」

 大丈夫だから離れて、と言おうとしたのが、彼の方からすぐに手を離された。
 そのことになぜか寂しさを感じてしまう。

「あ……」
 ふいについた言葉に、慌てて口を閉ざす。今、自分は何を言おうとしていたのか。
 脳裏に浮かんだ言葉に、私は顔が一気に熱くなってしまう。

 離さないで。そんな言葉が浮かんだが、すぐにかき消した。慌てて頭を振る私の目の前に大きな手の平が差し出された。

「え?」

 驚いて友紀ちゃんの顔を見上げると、彼は首を少しだけ傾げて柔らかく笑っている。
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