年下御曹司は初恋の君を離さない
「ええ。私の秘書をしております、久保です」
そんなふうに言ったので、ただの一社員だと言う訳にもいかなくってしまった。
戸惑った表情を浮かべないよう努力しながら、私は折り目正しく頭を下げる。
「挨拶が遅くなりまして申し訳ありません。私、小華和の秘書をしております久保と申します。今日は小華和と共に勉強させていだきたくお邪魔させていただきました」
「ありがとうございます。小華和さん、久保さん……お時間はございますか?」
「え? ええ……」
友紀ちゃんは少しだけ困惑した様子で返事をした。
それも仕方がないことだろう。相手はなんと言っても難攻不落で有名な『老舗和菓子店せせらぎ』である。
そして、相手はせせらぎの専務。上層部の人間だ。戸惑うなと言われても、無理だろう。
だが、さすがは友紀ちゃんだ。
すぐに平静に戻ると、藤司さんを見てにこやかに頷いた。
「せせらぎの専務に時間を割いていただけるなんて、光栄ですね」
朗らかな中にもビジネスマンの顔をチラリと覗かせる友紀ちゃんに、藤司さんはこちらも営業用のスマイルを繰り出してきた。
「ちょうど、弊社の社長が来ております。ぜひ、挨拶をさせていただきたいのですが」
これにはさすがに驚いた。
思わず目を丸くさせている私を余所に、友紀ちゃんは余裕な表情を浮かべている。