年下御曹司は初恋の君を離さない

 それは藤司さんも同じことを思ったらしく、二人で白熱した論議をしていて純粋に楽しんでいる様子である。
 まだまだ話し足りなそうな二人だったが、また後日に時間を取りましょうということでお開きになった。

 せせらぎの面々に挨拶をして見送ったあと、友紀ちゃんは私の手を握って思わず飛び上がってしまう。

「さぁて、未来さん。デートしに行こうか!」
「えっと……」

 握られた手を見て顔を赤らめたあと、友紀ちゃんを見つめる。
 キラキラの目で見つめられて咄嗟に頷きたくなったが、今の私は心も頭もグチャグチャな状態だ。こんな状況のまま友紀ちゃんと一緒にいることはできないだろう。

 考えこむ様子を見せれば、確実に友紀ちゃんは気にするし心配する。そうなったときに言い訳などできないだろう。
 だからこそ断りたいのに、なかなか妙案が浮かんでこない。

 まさか古傷に触れるような出来事が起こるとは夢にも思っていなかった。だからこそ、動揺しているのだろう。
 七年ぶりに再会した藤司さんだったが、彼の言っていた言葉もとても気になっている。
< 209 / 346 >

この作品をシェア

pagetop