年下御曹司は初恋の君を離さない

 もう二度と会うことはないと思っていた相手に再会したときのなんとも言えぬ感情。痛みと切なさと……そして後悔と。

 藤司さんの姿を見た瞬間、なんとも言えぬ感情が私を取り巻いていた。
 それも仕方がないことだと思う。当時の私は、藤司さんに絶大なる信頼を寄せていたのだ。

 それをいとも簡単に壊されてしまえば、その信頼は反動で不審に変わる。

 もう一度ため息を零したあと、鞄の中から藤司さんに貰った名刺を取り出す。全くもって気が重い。

 和菓子店せせらぎの専務として働いていた藤司さんは、私の記憶の彼より大人で仕事が出来る男性になっていた。
 もともと素質はある人だったから驚くことでもないのだが、七年前よりもっと自信と輝きが増しているように思う。

 七年前は他社で営業をしていた藤司さんだったが、数年前に叔父であるせせらぎの社長に頼み込まれて転職したらしい。
 ホテルのラウンジに向かう途中、藤司さんが教えてくれたのだ。

 それにしても人の縁というのは、不思議なものである。
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