年下御曹司は初恋の君を離さない

 始めに聞かされていたのは、OL目線での新作品評をしてほしいということだった。
 しかし、品評することは皆無で、ただただ仕事終わりにお抹茶をいただき、大将が作った和菓子を頂く。その繰り返しだ。

 そのためだけに私をここに呼ぶ意味が全くわからない。何度か理由を藤司さんに尋ねてみたのだが、いつもノラリクラリと躱されてしまい、真相は未だに不明である。

 茶筅の音が鳴り響く狭い一室に、昔好きだった男性と二人きり。なんだかおかしな組み合わせだとは思う。運命っていうのは、本当に唐突で残酷で……それでいて意味深だ。

「今日のお菓子はじいさんの自信作。気に入った人にしか作らない和菓子だ」
「え……? そんな貴重なモノ、私が頂いていいんですか?」

 私の目の前には色鮮やか且つ、繊細な切り込みが入った錬りきり。職人技を一つに凝縮したような和菓子に目を奪われていたのだが、そんな貴重なものだったなんて。

 和菓子せせらぎの店頭でも売っていないものなのだろう。なんだか私が食べるなんて恐れ多い。

 藤司さんにそう伝えると、クスクスと声を上げて笑われてしまった。
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