年下御曹司は初恋の君を離さない


 本当にこのご夫婦は仲が良い。
 ニコニコと笑みを浮かべながら二人を見つめていると、副社長が我に返ったように頬を赤らめた。

「征子ちゃん! ほら、未来さんが呆れかえっているよ」

 慌てふためく副社長が可愛らしくて、クスクスと笑い声を上げてしまう。

「呆れてなんていませんよ。いつもお二人は仲良しでいいなぁと思っていただけです」

 このお二人を見ると、結婚も悪くないと思う。

 思うのだが、そんな機会は私にはやってきそうにもない。
 未だに可愛い女の後輩たちにはモテているのだが、男性からのアプローチはからっきしだ。
 
 それに私は……今後一切恋愛をすることは無理だと思う。
 あのときの失恋で、今もズキズキと古傷のように痛む。

 憧れに似た恋だった。だけど、それは最悪な結末を迎えて、ジ・エンド。
 
 時折思い出しては、また胸が痛む。そんなことを繰り返していた。

 ある種の呪いのような失恋に、今も尚、悩まされている。
 こんな状況では、恋心を抱くなんて無理なこと。結婚にはほど遠い。

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