年下御曹司は初恋の君を離さない
そんな智子ちゃんは、この秘書部に所属した当初より私に懐いてくれている。
それには深い理由があるのだ。
なんでも、彼女の趣味は有名歌劇団の舞台を見ること。
智子ちゃんはとある男役の大ファンで、その人と私がよく似ているというのだ。
以前、智子ちゃんにブロマイドを見せてもらったのだが……自分では、似ているのかどうかわからなかった。
智子ちゃんが崇拝する男役は、本当に美しい容姿をしており、ウットリするほどだった。
そんな人と似ているなんて言われれば光栄ではあるのだけど……。でも、やっぱり役者さんの方がキレイだと思う。
智子ちゃんにそう言ったのだが、聞いてはくれない。
『はうーーーーん! 未来さまとお呼びしてもいいですか? それともお姉様とお呼びしたほうがいいかしら?』
と頬を真っ赤にさせて目を潤ませている彼女に、速攻でどちらもお断りしたのは言うまでもない。
そんな彼女とタッグを組んで仕事をしているわけだが、仕事の最中は彼女も社会人だ。
しっかりと補佐をしてくれているので助かっている。
副社長の専属秘書として大変だったときも、智子ちゃんが助けてくれたからこそうまく仕事を回すことができたと思っている。
ただ、私を理想の女性だと思われているのは……困ってしまうのだけど。