年下御曹司は初恋の君を離さない



「本当? 本当にそう思ってくれていますか?」
「ほ、本当よ?」

 何度も首を縦に振ると、彼は安堵したように肩から力を抜いた。

「それなら、この八年間の努力が報われた気がします」
「え?」

 目を何度か瞬きをして彼を見上げると、ニッコリと満面の笑みをされてしまった。

「言いましたよね? 未来さん」
「え? な、何を?」

 もう一度瞬きをする私に、友紀ちゃんは目を細める。
 その様子は、獲物を仕留めるときの鷹のように強い眼差しだった。

「日本に戻ってきたときには、もう一度告白させてもらうと言ったでしょう?」
「あ、えっと」

 確かにそんなことを言っていた。
 言っていたけど、あれは本気だったのだろうか。
 そして、今もその気持ちは継続していると言うつもりなのだろうか。

 私は狼狽えながら、友紀ちゃんを恐る恐る見つめる。
 視線が合うと、彼はとても嬉しそうに目尻を下げる。

「誰かのモノになっていたとしても奪い取るって。言いましたよね?」
「あ!」

 私が小さく驚きの声を上げるのと同時に、彼の唇が私の唇を捕らえた。
 柔らかい感触に私は思わず目を見開いてしまう。

 彼の長い睫がしっかりと見える。それほど至近距離に友紀ちゃんがいるということだ。
 いや、至近距離なんてものじゃない。ゼロ距離だ。
 私と彼は今、唇と唇で繋がっている。

< 78 / 346 >

この作品をシェア

pagetop