失礼ですが、強い女はお嫌いですか?
それじゃあ、レオネルの指示通りに脱税の証拠を持っていそうな間抜けな人物を絞りこもう、と入り口に足を向けたジードの後を追おうとして、ケイトはあることを思い出し足を止めた。
「あ、そうだ」
二人の視線がケイトに向かう。
今度はなんだというレオネルの虚ろげな眼差しと、レオネルの邪魔をするなというジードからの睨みだ。
「僕、見つけたんですよ」
「だから何をだ」
疲労のピークでレオネルの声が苛立つ。
しかし、ケイトは気にもせずニヤリと意味深な笑みを浮かべた。
「クリント領でーー」
レオネルの肩がピクリと跳ねる。
「リリエラ・マホーン様を」
ガタンと大きな音が部屋中に響く。それはレオネルが勢いよく立ち上がったせいで倒れた椅子から発せられたものだ。
大きく見開かれた青い瞳がぐらぐらと揺れている。
「それ、は……本物か?」
「はい。ご本人に確認をしました」
その回答を聞いたと同時にレオネルは入り口へと向かっていた。
普段、冷静沈着と言われているレオネルにしては珍しいくらい動揺しているようである。
入り口前に立っていたジードが邪魔なのか、ジードの腕を思い切り押すレオネル。
けれど、鍛え抜かれたジードが簡単に動くはずもなく、レオネルは思い切りジードを睨み付けた。
「どけっ!」
「机の上のお仕事はどうなさるつもりですか? それに、今からではすぐに夜になります。しっかり準備をしなくては」
「くそっ」
ケイトとジードは予想以上にレオネルが反発するので、さすがに驚いた。そして、改めて認識するのだ。レオネルが引きずる過去の重みを。