翼の折れた鳥たちは
「園田さんの呼吸の音は、いつの間にか俺の精神安定剤みたいになってたんだ。昨日の晩、なんか目が覚めてしまって、いつもの園田さんの音が聞こえないことに気が付いて……ナースコールした……」


敦也くんの表情は一気に強ばって、なんだか青白い気さえする。

「俺が気付いた時にはもう……」

「敦也くんも辛かったね……」

どう声をかけていいかなんてわからなかった。

たった、そんな味気ない一言しかかけることしか出来なかった。

それから黙々とリハビリを終えた敦也くんは、力なく一人で車いすを漕いでリハビリ室から出て行った。

その後ろ姿は、いつもよりとても小さく見えた。



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