翼の折れた鳥たちは
「答えは、今じゃないとだめですか?」


私の質問にいつもの優しい笑顔で首を横に振る部長。

「しばらく考えさせてください」

理学療法士は素敵な仕事だって思っている。就職する前も、今現在もその気持ち変わってなんかない。

歌だって、歌手の夢は理学療法士になると決めた時に諦めた。

だけど、歌を辞めるだとか、オーディションを受けないということは考えたことすらなかった。

「もちろん。答えは今ではなくても大丈夫だ」

ただ……、

部長が声のトーンを落としながら、重たい口を開く。

「ただ……、歌を選ぶって決めた時には早めに伝えて欲しい。職員の募集も人事部にお願いしないといけないから」


歌を選ぶなら、辞めろってことか。

遠回しに伝えられた部長の言葉に気分がどん底に沈んでいった。

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