混戦クルーズ! 造船王は求婚相手を逃さない
「あなた自身は、どちらがより望ましいと考えているんですか?」

 アレンが、値踏みするような目でマイケルを見た。

 率直な問いかけに本心を明かすとは思えなかったが、唐突な質問には、反射で態度が変わる必要がある。

 マイケルは、終始、へらへらした笑顔を顔に貼り付けているように見えた。

 とっさに取り繕ったようには見えない。

 食えない男だ、と、アレンは思いながら、マイケルの言葉を待った。

「ラインズさん」

 マイケルはマイケルで、アレンの真意を探っているようだ。ひとつひとつ表情を読むように、一旦言葉を区切ったうえで続けた。

「私は、仕事と家庭は分けて考えるべきだと思っています、……つまり、政略結婚については否定的という事です、もちろん、ガブリエルがイライザ嬢に惹かれているのでしたら、くどくなりなんなり好きにすればいいと思いますし、海軍令嬢に魅力を感じるなら、縁をつなぐのもいいでしょう、もちろん、その二人以外でも」

 薄笑いを浮かべながら、マイケルが続けた。

「私自身は、一人の女性のみを相手にするという事に、あまり価値を感じていませんが、正しく婚姻という約定の元、互いを支えあいたいというのであれば、好きにすればいいと思っていますよ」

 もってまわった言い方をしているが、イザード造船としては、ガブリエルの結婚については感知しないという事なのか。遠回しにはぐらかしているだけなのか、きっと、両方なのだろう、と、アレンは思いながら、これ以上の情報を引き出すことはできないのだろうと悟った。

 しかし、確実な話が一つある、海軍関係者とガブリエルのに縁談が持ち上がってるという事と、ガブリエル自身はその件については乗り気では無いという事、そして、イザード造船と海軍にはどこか秘密めいた接点がある。

 ブルームーン商会にも伝手はある。そちらから、探りを入れるという手もある、と、アレンはイザード造船ララティナ港事務所を後にした。
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