嘆きの断片
「オレ──いや、わたしは」

 言われてみれば、幸運のストラップを作っているときだけは殺された家族のことを考えていた。

 輝ける記憶がわたしを癒していた。しかしすぐ、それは黒い記憶に塗り変わり、わたしを憎しみの魔物へと駆り立てる。

 わたしは今まで、どこにいたのだろう。まるで水の中のように重く、まとわりつく空気に全てが灰色に染められた世界を彷徨っていた気がする。

「それがようやく、晴れたようだ」

 落ち着いた石動はふと、ラクベスの羽織っているマントに目が留(と)まった。

「その外套(がいとう)も、そうなのか」

「はい。制作員の方々が手がけました」

 マントを石動に手渡す。

「良い出来だ」

 受け取ったマントは思っていたより重たくもなく、しっとりと肌に馴染むほど滑らかだ。
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