朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


俺は、父親が首を吊って死んでいるところを目撃している。


そういう体験をしてしまった後遺症で、それ自体は珍しいものではないんだけど、自身の首にも何かが触れることが出来ない。
 

ボタンも、一番上まではしめられない。
 

中等部は学ランだったからまだよかったんだけど、高等部はブレザーで、ネクタイは校則で必須になっていた。


教師はそのことを知っていたから、ネクタイをしてなくても特別注意されることがなかったんだけど、理由を知らない、当時風紀委員だった絆は食ってかかって来た。


特別扱いに納得がいかなかったんだろう。


一度、担任に尋ねられたことがある。


絆が全然退かないから、自分の方からそれとなく言って置こうか? と。


さすがに、俺に黙って話すことは躊躇われたようだ。


俺は、大丈夫ですと答えた。
 

その頃には絆との追いかけっこが楽しくなっていて、ダメな理由は、いつか話せたらいいか、程度に考えていたから。
 

絆の追い掛け回しに拍車がかかったのは、俺が留年してからだった。

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