朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
そのとき、ドアチャイムが鳴った。お客さん? 足は反射的に動いて、出迎えてしまった。
長年の癖だろうか。夜々さんの教え通り、勿論チェーンロックはかけたままだ。
「あ、咲桜帰ってたのか」
「! りゅっ」
うやくん……と、語尾は力なく霞む。
「入ってもいいか?」
「あ、うん……」
断る真っ当な理由がないので、一度閉めてからチェーンを外す。
ありがとう、と言って流夜くんは入って来てドアが閉まった直後、当然のように抱きしめられた。
「あー。生き返るー」
温泉にでもつかったみたいな台詞だ。小さく身じろぎする。
「さっき電話したんだけど……帰ってきたばかりだったか?」
流夜くんが首を廻らす。
陽も落ちかけているのに、リビングに明かりもついていない。
本当に今帰って来たばかりのような感じ、だと察したんだろう。
「どうした? 何か考えごとでも?」