朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「斎月は俺が中学の頃からの知り合いだ。なんと説明していいのか……向こうの立場上はっきり言えなくて悪いんだが、弟みたいなもんなんだよ」
「………」
弟。
「なに、それ……」
「え? 咲桜?」
「弟って家族じゃん……流夜くんにそんな人がいるなら知ってたかったよ……っ、ってかそもそもあの美少女が男なの⁉ はっ! まさか何か手術的なことをされた方とか――」
私の思考回路、途中からぶっ飛んだ。
流夜くんはびっくりした顔になる。私も、自分の言葉にびっくりしていた。
自分のやきもちの加減ってそんなところにあったのか……。
『流夜くんの家族』。
謝らなくちゃ。こんなのただの言いがかりだ。
ちゃんと答えてくれたのを一方的に責めたりして……。
そして自分の言動がまた滅茶苦茶だった気がする。
ぐいっと、腕を引かれて後頭部を捉えられた。
瞬いた間に唇が押し付けられる。何度目かの感触。しょっぱい。
しばらくそのまま離してもらえなかった。
息が苦しくなった頃にやっと戒めが解かれて……流夜くんは、何かを決意した表情をしていた。
捕らえられた手はそのままで、顔だけ離れた。
「在義さんは?」