朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
流夜くんの口から出た名前。
……なんか色々ツッコミどころあるけど――流夜くんの声は真剣だ。
「斎月のこと、見かけたのか?」
流夜くんにとっては想定外の人物だったようで、言葉がはっきりしない。
ひとしきり、うーんと唸っている。
それでも……あの人は、たまたま逢った人、とかではないんだ。
「あいつのことは何て説明すりゃいいかな……言って置くけど、元彼女とかそういった関係では一切ないから。あいつには決まった男がずっと昔からいるから」
今言えるのはこれだけだと言うように、流夜くんは言った。
でも、それだけでは納得出来なかった。
――真剣な顔の流夜くん。親し気に出された手。
そんな人が、どんな関係だって言うの。
……でも、そろそろ肯かないと流夜くんを困らせる。
恋愛関係とは関係ないと、断言してくれたのに。