朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


「お、遅くなるって……」


「そうか」
 

そう言って、ポケットからスマートフォンを取り出す。


もう片腕で私の肩を抱き寄せ、腕の中に収める。


思いっきり心臓が跳ねた。


「あ、斎月か? 今どこにいる? ……そうか、すまないんだが――――」
 

……電話の相手は、先ほどの美少女のようだ。


ま、まさかこれから世にいう修羅場になるんじゃ……。


明後日の方向に心配が加速していく。


通話はすぐに終わり、流夜くんに腕を引かれた。


「咲桜に誤解させたままなのは無理だから、少し来てくれないか?」
 

何が無理なのかはよくわからなかったけど、あまりに真剣な瞳で言うので、こくりと肯いてしまった。

 
駐車場に停めてあった流夜くんの車に乗せられた。


「あの、どこに――?」


「《白》。まだ近くにいるって言うから、あいつから説明してもらう。俺ではどこまで話していいか、正直わからないから。……不安にさせて、ごめん」

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