朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】


そんなこと……。


たぶん自分は勘違いしているんだということは、なんとなくわかって来ていた。


けれど、引っ込みがつかないと言うか。


正体不明の『いつき』という少女に対して、まだわだかまりは解けていなかった。


本当になんであの美少女を『弟』なんて称するのかもわからない。
 

途中、流夜くんの左手が、私の手を握った。
 

振り払うことも、振り払う気にもなれなかった。
 

手のひらを上向かせて、握り返した。


《白》につくと、あの人はまだいなかった。


流夜くんが龍生さんに「斎月に話があるから使わせてほしい」と願い出ると、龍生さんは「おう」とだけ応じた。


テーブル席。流夜は窓際に座り、隣に私を座らせた。


「咲桜……何か嫌なとこでも見たのか?」
 

流夜くんの声は、ずっと私の心配しかしていない。


……何やってるんだろ、自分。大事な人をこんなに困らせて……。

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