朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】



「オトは今、どこか親戚の家に?」
 

お茶と、笑満ちゃんが作り置きしていたというお菓子がテーブルに並び、憲篤さんと生満子さんと向かいあって座る。


紅茶を注ぎながら生満子さんが問う。


「いえ。施設に入ったんですけど、中学んとき出ました」


「え……施設を?」
 

生満子さんは胡乱な声を出す。


「はい。なんか合わなくて。その後は、最初の頃から俺を助けてくれた人たちを頼って、今はバイトしながら一人暮らししてます。学校は特待生になれたから負担はないし、アパートも安いとこですけど」
 

何回か話したことがある経緯。松生夫妻は驚いたように顔を見合せている。


「逞しくなったわねえ」


「こういう気質だったんだと思います。自分の生きたいように生きてる感じです」


「そう――実はね、私たちがここに落ち着いてから、オトのことを探したの」


「「え」」

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