朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
唇が、微かに動く。家族? もう自分にはいないのに――これから、でも……出来るのか? 出来て――いいのか?
唇を噛んだ。もしかしたら、心の中では願っていた? 笑満ちゃんと恋人になることで繋がる可能性――
「………」
でもそれは、笑満ちゃんでなければ願いもしないし、考えもしなかったことかもしれない。
感情も、現実も、笑満ちゃんが全部、くれたもの。
「……笑満ちゃんのこと、絶対絶対、一番に大事にします。……ずっと、絶対」
顔をあげられなかった。俯いたまま唇を噛んだ。
この優しい人たちが、幼い自分の傍にいてくれた。
……今も、一人で立っているのは不安定な自分だけど。
「……お願い、します。笑満ちゃんと一緒にいることを、認めてください」
「――うん」
憲篤さんの鷹揚な返事。俺はやっと顔をあげた。
憲篤さんは泣きそうな顔だった。
「笑満のこと、よろしくお願いする」
そっと、憲篤さんの手が俺の頭を撫でた。
「よく……頑張ってくれたねえ」