朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
えらいえらい。親が子供にするように、俺の頭を撫でまわした。
俯いた顔があげられない。とうになくなっていた存在が急に現れて、困っていた。
どういう反応をすればいいのかわからない。
親のような存在――子どもの自分を支えてくれた二宮さんたちがいたとしても、幼い俺を知っているのは、もう笑満ちゃんの家族ぐらいしかいない。
だから、この人たちの前では本当にただの子どもに戻った気がして、時間感覚がおかしくなってしまう。
今はもう、憲篤さんの背も追い越して、幼馴染という呼称しかなかった笑満ちゃんは、恋人なのに。
……どうしていいのか、わからない。
「オト、ご飯食べてく?」
「え――と」
生満子さんの申し出に、またたじろいでしまう。
今まで夕飯は大体、神宮のとこへ乗り込むか、雲居の探偵事務所兼自宅のある小さなビルに乗り込むか、バイト先でもらった弁当や惣菜を持って《白》で食べたりしていた。
俺に限り、二宮さんは持ち込みを許してくれた。《白》に行けばほぼ春芽はいたし、たまに神宮や雲居もいた。