朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「え……俺?」
「うん。八月一日。降渡さんに聞いたんだけど……はっ! まさか私、降渡さんに騙された⁉」
どうでもいい嫌疑が発生していた。
これを降渡さんが聞いていたらさめざめ泣くことだろう。俺、りゅうとふゆのことで嘘つかないよ……とか。
「あ」
今気づいたといわんばかりに流夜くんは小さく声をもらした。
「え? あ、あの、合ってる? 騙されてる? 私ケーキ作って来ちゃったんだけど――」
「あ、いや、今思い出した……確かにそうだ。そうか、咲桜と一日違いだったのか……」
何やらブツブツ言っている。えと……明日がお誕生日、でいいのかな?
「その様子だと、同じ状況だったみたいだな」
「え?」
もう見慣れたアパートの駐車場。流夜くんが車を止めて、エンジンを切った。
「十六歳の誕生日おめでとう、咲桜」
「…………………ああ!」
お祝いの返事にしてはややびっくりさせる反応で返してしまった。
私はまたわたわたし出した。そうだ! 今日だ!
「忘れてました!」