朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
流夜くんが私の左頬を引っ張った。
いひゃい、私は一度意識の全部が頬、流夜くんに向いて挙動不審を収めた。
「俺が頼んだ。在義さんに。咲桜といさせてくださいって」
「………そうなの?」
「ああ。そうしたら、……まあなんとか了解をもらった」
「なんとか?」
在義父さん、また流夜くんいじめたのかな……。若干顔色が悪い。
「それで、咲桜はそれ作ってくれたと?」
気を取り直したように流夜が、咲桜の膝の上のものを指さす。
「あ――うん。笑満に教わって。……私壊滅的にお菓子作り下手なので。……出来の保証は、あまり……出来ない……かも……しれない……けど……」
今更ながら不安になってきた。
どうしよう、お砂糖とお塩というベタな間違えをしていたら。
流夜くんだったら笑って済ませてくれそうだけど、なんでお誕生日に塩辛いケーキ食わなきゃならんのだ。