朧咲夜4-朧なはなの咲いた夜-【完】
「俺も、恋人の誕生日とか初めてでよくわかってないから……年甲斐もなく申し訳ないけど」
「ううん、ううん!」
必死に首を横に振ると、流夜くんはくすりと笑った。
「せっかくだからどこか連れて行こうと思ったんだけど……咲桜も考えててくれたんだな」
「うん。私が流夜くんとこいたいってお願いしたんだし。その……やっぱり二人きりでいられるのが……すごい幸せなので」
するりとそんな言葉が口からこぼれた。
大っぴらには出来ない関係だからかな。二人きりの時間と、空間は、何よりの宝もの。
「……なあ、今日はほんとに帰さなくていいのか?」
ふと、流夜くんの声がどこか沈んで聞こえた。
「あ、それは、流夜くんのお誕生日の日をすぐにお祝いしたいって私の勝手だから……流夜くんが嫌だったりお忙しかったら帰るよ?」
「だめ」