クールな上司は確信犯

深い気持ち

あれから2ヶ月、粘りに粘った和泉だったが、結局部長権限には勝てず渋々派遣社員を入れることに承諾した。
ポーカーフェイスを決めているけれど、有希にはわかる。
めちゃくちゃ不機嫌だということが。

有希も総務に戻るよりも和泉の下で働きたいと願っていたが、人事異動の話を聞いてから2ヶ月も経っていたので、すでに心の準備ができている。
とはいえ、寂しいものは寂しい。

先日派遣会社の担当に連れられて面接に来ていた女性を思い出す。
愛想があって可愛くて、有希よりも若い子だった。
とても印象はよかったのに、だからこそ嫉妬してしまう。
ただ加勢が終了するだけなのに、取り替えられた気持ちになって。
総務部から必要とされているのに、だ。

そんなことを少し和泉に愚痴ったら、会社ではあんなに不機嫌だったのに、何でもないように言った。

「有希は案外嫉妬深いんだな。」
「なっっっ!」

どの口が言いますか~と思ったけれど、まあ間違ってはいないので素直に認めておく。

「そうですよ。和泉さんの近くにいるのは私がいいんです。でも嫉妬するって言っても和泉さんほどではないですよーだ。」

一応反論も織り混ぜてみたら、和泉はあっさりと認めた。

「確かに、俺の方が嫉妬で狂いそうだ。有希がそばにいないと考えただけで心配で仕方ない。」
「案外心配性ですね。」
「それほど、お前を愛しているということだ。」

突然真剣な眼差しで言われ、有希は固まってしまう。
言われたことが頭の中を反芻して、頬が熱くなるのがわかった。

ドキドキする胸を押さえながら和泉を見ると、頭をポンポンと撫でてからゆっくりとキスをされて。
あまりの優しさにいつも以上にとろけてしまいそうだった。
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