誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

(私がここに残りたいっていうのは、ただのわがままだよね……)

 ぼんやりとひとり、乾燥機の中を見詰めていると、

「小春ちゃん」

 朗らかな声で、名前を呼ばれた。

「あ……」

 声のしたほうを振り返ると、長身の男が立っていた。
 閑だ。仕事の途中で寄ってくれたのだろうか。グレーのスーツ姿で、腕に脱いだコートを掛けている。

「今、大将と少し話したところ。店をたたみたいって相談を受けてね。依頼を受けることにした」
「……はい」

 小春にとっては寝耳に水だったが、大将の決意は固いということだ。きっと意識を取り戻してから、ずっと考えていたのだろう。

「東京に出てきて、もう二年だっけ?」

 閑が乾燥機の前に立ち尽くす、小春の隣に肩を並べる。

「二年前の秋に上京しましたから」

 こくりとうなずくと、閑が優しげに目を細める。

「そっか。じゃあ俺と小春ちゃんも知り合って二年ってことだな」

 閑の目は、髪の色同様、色素が薄い。
 抜群のスタイルも相まって、外国の血が入っているのではと何度か思ったことがあるのだが、とにかく華やかな容姿をしているので、まじまじと見つめられると照れてしまう。

(眩しい……あんまり見ないでほしいな……)

 その視線を受けて、小春ははにかみながら、うつむいた。

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