誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
(嘘……)
じっと小春を見つめる閑の表情はとても真面目で、嘘や冗談を言っている雰囲気はみじんもない。
いや、そもそもこれだけのキスをしておいて、彼の言葉が偽りであるはずがない。
(嘘じゃないんだ……)
じわじわと、全身をあたたかく優しい感情が満ちていく。
だが小春は慌てて首を振った。
「ま、待ってっ……」
(無理、無理だよ、無理すぎる……!)
閑に抱かれる心の準備がまったくできていない。
コップ一杯のビールのアルコールなど、すでに吹っ飛んでしまったし、そもそも閑がシラフだ。
「だめ、待たない。戻ってきたらめちゃくちゃ抱くから。聞きたいことも、その時に聞く」
閑はそう早口で言い放つと、そのまま身一つで飛び出して行ってしまった。
「ど……どうしよう……」
呆然と閑を見送った小春は、震える手で唇を押さえる。
嘘でも幻でもない。
確かに閑はここにキスをして、小春を抱くのだと宣言したのだった。