誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「じゃあどうして、あの夜のことを、忘れてなんて言ったの」
少し悲しそうな声色に、小春の胸はしめつけられる。
「私が、臆病だったからですっ……答えを出すのが、怖くて……!」
その瞬間、小春を抱く閑の腕にグッと力がこもった。
「――ごめん」
「えっ……?」
小春は戸惑いながら、首を振る。
(閑さんは何も悪くないのに、どうして謝るの……?)
申し訳なさすぎて、じんわりと目に涙まで浮かんできた。
すると閑はきれいな指で小春の目の縁を優しくなでて涙を拭きとったあと、こつんと、額を合わせてささやいた。
「結局、俺も臆病だった。あの後も、依頼人の関係者だから、何年も知ってる顔なじみだから、ほっとけないからと、あれこれ理由をつけて、深く考えないようにしてたし、自分の気持ちに気づいた後も、結局強引に気持ちを伝えて、嫌われるのが怖くて、好きだと言えなかった」
「閑さん……」
「でも、もうそれも終わりだ」
閑の両手が、小春の頬を包み込む。
頬を傾けた閑の顔が、ゆっくりと近づく。
「俺に抱かれて……」
かすれた声でささやく閑のこはく色の瞳が、濡れたように輝いた。