誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「恥ずかしながら、東京に出てきたのは、なんとなくなんです。あのまま父のレストランを手伝ってもよかったけれど、十代の半ばまでいた東京がなんとなく懐かしくなって……父が再婚したのなら、私が側にいなくてもいいだろうって、それでなんとなく出てきて……」
改めて口で説明すると少し恥ずかしいが、これが自分の正直な気持ちなのだ。それに嘘をついたって、聡い閑に誤魔化しは通用しないことはわかっている。
「なんとなく出てきたんだから……帰ろうかなって……」
そう口にしながら、小春の表情はどんよりと暗くなってしまった。
「……帰りたくなさそうだ」
「…………」
閑の指摘に、小春は口ごもる。
確かに彼の言うとおり、自分は“帰りたくない”と思っている。
だが人に説明できる、理由がない。
夢や目標があって、どうしても東京にいたいという理由があるなら、まだしも、なんとなくでは言い訳にならないではないか。だから帰るしかないのだろうと、自分に言い聞かせている。
それに父だって、中本のおじさんだって、それを望むだろう……。