誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「お父さんはなんて?」

 閑の問いかけに、小春は肩を落とす。

「それが、お父さん、携帯を持たない派で……。だからさっき……七時くらいに自宅に電話したんだけど、誰も出なくて」
「そっか」

 閑は顎のあたりを指で撫でながら、少し考え込んだ。

「お母さんは、こんなメッセージを、遊びや冗談で送ってくる人ではないんだよね?」
「はい。そんなことは絶対にしないです。とっても真面目な人だし。本当に、どうしてこんなことになったのか、見当もつかなくて……」

 そう言って小春は、ため息をつき、うつむいた。

(美保さん……ほんわかして、あったかくて、ゆったりしてて……瀬戸内の海みたいに心が広い人なのに……どうして?)

 突然のこと過ぎて、まったく理解が及ばない。

 なぜ、どうして?

 昨晩から、頭の中で、突然湧いてきた疑問がぐるぐるとずっと回っている状態だ。

「小春……」

 閑が持っていたスマホをテーブルに置いて、そのまま小春の体を抱き寄せる。

「眠れなかった? 目の下にクマができてる」


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