誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
「あ……」
閑の指摘にドキッとした小春は、頬に手をやった。
確かにメッセージを受け取ってから、一睡もできなかった。仕方なく早くベッドから抜け出して、朝食の準備をしたのだが、自宅に電話をしても誰も出なかったせいで、混乱は続いたままだ。
「俺、全然気づかなくて、ごめんね。起こしてくれてよかったのに……。小春、気を使ったんだろ?」
「そんなの……全然、閑さんが気にすることじゃないです。私、もともと眠りが浅いから……」
そして小春は、いったん息を吐き、閑の背中に腕を回した。
「私……ちょっと実家に帰っていいでしょうか。とりあえず大将にも事情を話してみますけど、やっぱり気になるので」
「そうだね。それがいいと思う」
閑は小春の背中をとんとんと叩いた後、あたまのてっぺんにキスを落とす。
「なにかあったらすぐに連絡して。いや、なくても連絡はして。今どうしてるのかなって、気になるから」
少しからかうような口調になったのは、小春を励ますためだろう。
「はい」
小春はうなずきながら、笑顔を作った後、さらにしがみつくように閑の背中を抱きしめた。
このぬくもりを少しでも覚えて、勇気を蓄えようと、思ったのだった。