誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
相変わらず泣き虫だし、思う事をあまり口に出せないし、口下手だ。
(情けないな……)
小春はこつんと、バスの窓ガラスにおでこを押し付けた。
「はぁ……」
昔の思い出が記憶から零れ落ちたせいで、少し憂鬱な気分になってしまった。
口からため息が漏れて、視界が白く曇る。
またいつものマイナス思考が、じわじわと近づいてきている気がした。
(あーっ、もうっ、だめだめ……! こういうのやめたいって思ったばかりじゃない!)
小春は落ち込みそうになる自分を、必死に立て直そうと目を閉じる。
閑に出会って、彼を好きになるまで、こんな自分を変えたいなど、思ったこともなかった。
だったら、変わりたいと思う事は、すでに進歩だ。
だから落ち込むことはない。
『自信をもって』と言ってくれた閑の柔らかな笑顔が思い浮かび、心に浮かんだ焦りのような気持ちが、少しずつおさまっていった。