誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 相変わらず泣き虫だし、思う事をあまり口に出せないし、口下手だ。

(情けないな……)

 小春はこつんと、バスの窓ガラスにおでこを押し付けた。

「はぁ……」

 昔の思い出が記憶から零れ落ちたせいで、少し憂鬱な気分になってしまった。

 口からため息が漏れて、視界が白く曇る。

 またいつものマイナス思考が、じわじわと近づいてきている気がした。

(あーっ、もうっ、だめだめ……! こういうのやめたいって思ったばかりじゃない!)

 小春は落ち込みそうになる自分を、必死に立て直そうと目を閉じる。

 閑に出会って、彼を好きになるまで、こんな自分を変えたいなど、思ったこともなかった。
 だったら、変わりたいと思う事は、すでに進歩だ。

 だから落ち込むことはない。

『自信をもって』と言ってくれた閑の柔らかな笑顔が思い浮かび、心に浮かんだ焦りのような気持ちが、少しずつおさまっていった。


< 214 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop