誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
小春も慌ててその後を追い、
「お父さん!」
と背中に向かって声を掛けた。
「私に言わなくちゃいけないことない?」
すると父は肩越しに振り返って、若干渋い表情になる。
彫りの深い顔だちに、少し痩せた長身。白髪のベリーショートで、年の割にはだいぶ若く見えると昔から言われていたが、さすがに年を取ったと思う。
当たり前だが、自分が子供から大人になったように、父も年を重ねているのだ。
じっと見れば、表情に疲れが見て取れる。
もちろん仕事が忙しいのもあるだろうが、それだけではないだろう。妻が出て行くという状況は、相当なストレスになっているはずだ。
「――」
だが佑二は、小春の視線を受けても、相変わらず黙っている。
もしかしてしらばっくれるつもりなのだろうか。隠し通せるとでも思っているのだろうか。
一対娘をなんだと思っているのかと、小春は軽く憤慨しながら、体の前で腕を組んだ。