誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「えっ……ちょっと、お父さん!?」

 慌てて追いかけたが、ドアは目の前でぴしゃりと閉められる。すぐにノブに手をかけたが、どうやら鍵をかけたようだ。

 ガチャガチャとノブを回す、虚しい音だけが寒々しい廊下に響いて、小春は眩暈がした。

「――嘘でしょ……」

 ほんの少しの間、小春は事実を受け止めきれず呆然と廊下に立ち尽くしていたが、次第にだんだん腹が立ってきた。

 聞かれたくないことから逃げて、いったい何になるというのだ。
 だが同時に、こういうところは自分は父に似たのかもしれないと、情けなくもなる。

「それでもっ……鍵を……かけるなんて……子供みたいなことしてっ……! お父さんの、馬鹿っ!」

 力いっぱい叫んだ後、小春は自分の部屋に戻ってボストンバッグをつかみ、マンションを飛び出していた。

「最低、さいてーい!」

(もうっ……なんなの!? ほんと、意味わからない!)

< 223 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop