誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 まさかと思いながら、おそるおそる彼の名前を呼ぶ。

「閑さん?」

 偶然のはずがない。ここで閑は誰かを待っていた。

 だとすると、彼がここに、母を呼んだのだ。

 嘘だと思いたかった。違っていてほしかった。
 だって小春は、母に会いたくなどないのだから。
 そもそも、どうして閑が自分の嫌がることをするだろう。そんなはずがないではないか。

 けれど閑は、まったく悪びれた様子もなく、うなずいた。

「うん。俺が呼んだ。中本の大将から平田さんの連絡先聞いて、そこから無理やり聞き出して、連絡を取った」
「なっ……なんでっ……?」

 信じられない状況に、小春の唇は、激しくわななく。

 ここが空港でなければ、もっと大きな声で叫んでいたかもしれない。

 平田というのは、虎太郎のことだ。確かに虎太郎に聞けば、母の居場所や連絡先は、容易に知れただろう。

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