誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~
胸の奥で心臓がドキリと跳ねる。
そして体全体がじわじわと、強張っていくのを感じた。
意識が覚醒し、小春は瞼を持ち上げる。
すると目の前に、上品なベージュのスーツの上に、黒いコートを羽織った、年配の女性が立っていた。
「――」
小春は言葉を失った。
夢の続きのような気がしたし、とても現実として受け入れられなかった。
だが次の瞬間、頭に大きな石をぶつけられたような衝撃を受ける。
「おか……あ、さん?」
そう、目の前に立って、少し背中を曲げて、閑の肩にもたれるように眠っていた小春の顔を覗き込んでいたのは、実の母である黎子(れいこ)だったのだ。
十年前とそれほど印象が変わらないのは、なぜだろうか。
虎太郎はよく似ているといったが、自分ではよくわからない。
だが全体的に、派手さよりもしっとりとした人形のような雰囲気は、昔とまるで変わっていない。
「なんで、ここに……」
そう言いながら、小春は隣りで変わらず肩を抱いている閑の横顔を見つめる。