誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 その言葉を聞いて、混乱していた頭が少し冷静になる。

「私たち、家族のため……?」

 小春は自分で涙をぬぐいながら、閑を見つめた。

「ああ」

 閑の明るい琥珀色の瞳に、ぼんやりと自分の影が映っている。
 こんなふうに、恐れることなくまっすぐに見つめてくれる彼が、どうして自分を裏切ることがあるだろう。小春が嫌がることだとわかっていても、閑がそうするべきだと思ったのだったら、自分だって考えなければならない。

(だって、これからもずっと閑さんと一緒にいたいもん……強くならなきゃ……)

 そうだ。自分はもうひとりではない。今までのように逃げることは選びたくない。そうしないように頑張ろうと誓ったばかりだ。

 これは、母とも、そして自分とも向き合うための時間なのだろう。

 小春は息を整えながら、うなずく。

「わかりました……取り乱してごめんなさい」

 それを見て、閑はホッとしたのか、肩を抱く手の力を緩め、優しく小春の肩を撫でる。


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