誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「――はい。美保さん、父の事お願いします」

 小春はぺこりと頭を下げて、閑とふたりでマンションに帰ることにした。

「閑さん、タクシーを呼んできましょうか」
「ん、いいよ。あったかい蕎麦食べたら目が覚めた。大通りまで歩いて適当に拾おう」
「はい」

 小春と閑は、並んで夜の商店街を歩き始める。
 食堂から離れると、一気にしん、と静かな夜になり、足元から冷えが襲ってきた。

 思わずコートの上から腕をさすると、

「寒い?」

 閑が立ち止まり、バッグの中からマフラーを取り出して、小春の首に巻いた。

 マフラーからは閑の香りがふわりと漂う。

「ありがとうございます」

 優しくされるとくすぐったい。

「うん、これでいい」

 閑はにっこりと笑って、それから何気なく顔を近づけ、小春の唇にキスを落とす。
 触れたのはほんの一瞬だが、外でキスをされた小春は驚いてしまった。

「そ、外ですよっ!」
「うん、そうだね」

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