誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

 閑は笑って小春の手を引くと、慣れた様子で大きな門をくぐり、玉砂利が敷き詰めてある小道を通り、そのまま庭へと向かっていく。

(都内にこんな広い御庭付きの豪邸って……)

「あの、閑さん」
「ん?」
「学生時代のお友達って言ってましたよね。どういう人なんですか?」
「ああ……同級生でね。天野蒼佑(あまのそうすけ)って言うんだけど。HF(ヘブンズフィールド)って知ってる?」
「飲料水メーカーのですか?」
「そう。HFの長男なんだよ」
「……えっ!」

 日本に住んでいて、HFの名前を聞いたことがない人間は、まずいないのではないのだろうか。飲料水から酒造まで、多くの関連グループ企業を持つ、大企業である。

「ここがその、天野さんの実家?」

 まさか日本有数の飲料水メーカーの関係者宅だとは思わなかった。

 小春はドキドキしながらあたりを見回す。

 住宅部分よりもずっと広い庭園には、大きな木と、池と、きれいに刈られた植木と、さわやかな春の風が吹き抜けている。

< 299 / 310 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop