誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「辛いときに、無理して笑わなくてもいいとは思うんだけど……。でも、小春が笑ったほうが気分が晴れるっていうんなら、一緒に笑おう」
「……はい」

 あたたかい気持ちが、全身に広がっていく。
 うなずくと、背中に回っている閑の手に力がこもる。

「で、春先は仕事が忙しいから、秋ごろに落ち着いたら、小春のご両親に挨拶に行こうか」
「え……?」

 両親に挨拶と言われて、一瞬ポカンとした。

 去年、挨拶はすませている。今さらなんの挨拶をすると言うのだろう。

「それからお母さんにも、連絡しようね。やっぱりプロだし、力になってもらうのがいいと思う」

 続けた閑の言葉に、小春も自分が何を言われているのか、ようやく気付いた。

「……それって」

 お母さんというのは、小春の実の母の事だ。
 そして彼女の仕事は、ブライダルサロンで――。

「うちの親は日本にいないんだよな。だから、先に兄貴たちに会わせるよ」
「閑さんっ……!」

 焦れたように小春が叫ぶと同時に、唇がふさがれる。
 一瞬触れ合った唇が離れて、桜吹雪が舞った。

「そろそろいいだろ? イエスって言うまで、離さないけど」

 閑のこはく色の明るい瞳が、太陽の光を受けて、キラキラと輝く。

「イエスって言いたいけど、離してほしくないです……!」

 小春が笑うと、閑もまた、笑った。



end.
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