誘惑前夜~極あま弁護士の溺愛ルームシェア~

「なんですか、この部屋!」

 部屋の間取りは3LDKに、ウォークインクローゼットがついている。リビングダイニングは続きになっているが、おそらく二十畳くらいの広さがある。
 だが本来の床が見えない。

 脱いだ服、広げた新聞、中味が取り出されていないスーツケースに、ボストンバッグ。なぜかテーブルのふちにきれいに並べられている、ビールの空き缶。とにかくひどいありさまだ。

「こんないいお部屋がかわいそうですっ!」
「うん……まぁ、俺、掃除が壊滅的に下手で……っていうか、できなくて……」

 閑はあはは、と嘘っぽく笑いながら、己の髪をぐしゃぐしゃとかき回す。

「週に一度は、えーっと、弟……弟に片付けてもらってるんだけど、先週たまたたま、弟が来られなくてね。こういうことに……」
「へぇ……」

 小春は呆然としながら、おそるおそる、キッチンの方向を見つめる。

 だが、キッチンにはなにもなかった。
 こういう場合、汚れた食器が積み上がっているものだが、なにもない。ただ、使っている気配もゼロだ。

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